季節はもうない
この日本には、春、夏、秋、冬の四つの季節。「四季」がありました。
春には桜、夏には花火、秋には紅葉、そして冬には雪。それぞれ季節にはシンボルがありました。
それを楽しみに一年を過ごす。そんな日々もあったそうです。
僕は、四季のある時代に生まれたかったです。
今日、中学校で出た宿題。それは自分の夢について作文を書け、というものだった。
僕の夢。それは「四季」を見てみたい。
おばあちゃんが子供の頃は、四季があって一年間でいろいろな表情を見せる自然が、当たり前のようにあったらしい。
だが、今はそうじゃない。一年中、真っ白な世界。季節で言えば、ずっと冬。ただただ寒い一年間なのだ。
お父さんやお母さんは、こういう世界に対して疑問を抱かない。
この世界が冬で満たされたのは、おばあちゃんが高校生の頃だったらしい。暑くなったり寒くなったりを繰り返しながら、徐々に冬の時期が延び、夏の時期が減り、気が付けばこの世界は冬一色になった。
四季があった当時のことを、おばあちゃんに聞くと、それは楽しいそうに話してくれる。
春にはピンク色の花を咲かす、桜の木の下で家族とお弁当を食べたり。
夏には熱い砂浜の上を水着になって歩き、友達と海で泳いだり。
秋には真っ赤に染まった木々を眺めながら、絵を描いたり。
冬以外の三つの季節の話は、僕の知らない世界の話で、ホントにおとぎ話を聞いているようだった。
そんなおばあちゃんの話を聞いた僕は、長期連休の日に、この世界の真実を探そうと思った。
そのことをクラスメイトに話したら、笑われた。そりゃそうだ、こんな中二病じみた事、誰が本気にするんだ。でも、委員長だけは違った。
「世界の真実?なにそれ面白そう!私たちで暴いちゃおうよ。」
以外だった。あのクールな印象の委員長が、まさかこんなバカげたことに付き合ってくれるなんて、正直うれしい。
こうして僕は委員長と二人で、この世界の真実。どうしてこの世界から四季がなくなったのかを調べることにしたんだ。
パソコンで調べても、図書館で調べても、当時のことを知ってるご老人に聞いても、どうして世界が冬になったのか、決定的な原因は出てこなかった。
なんの成果も得られないまま、委員長の待っている公園に向かった。
公園にある屋根付きのベンチに腰掛け、二人で調査結果を発表した。もちろん二人とも成果なしで、なんか気まずい空気が流れる。
「でも、おかしいよね。世界が冬だけになるって、どう考えても大ニュースだし、ネットに情報あるはずだよね。」
委員長がそういうが、僕はあることに気づいた。
「誰かが、隠ぺいしてるとか?」
「まさか・・・。」
「さすがに、そんなことないか。」
その日は、委員長と解散して、僕は帰路についた。
夕方、僕はまた、おばあちゃんの話を聞いていた。季節のあった時代の話。おばあちゃんの話は、とてもリアルで、ネットで見るよりも正確な情報のように聞こえた。
今日、おばあちゃんが話してくれたのは、おじいちゃんとの馴れ初めがメインだった気がする。
今日みたいな真冬の日、おばあちゃんがまだ中学生で、おじいちゃんとはクラスメイトだった。
そして、二人は良い感じの関係になったらしいけど、クラスでスクールカースト上位の存在。お局様のような女子は、それが気に入らなかったらしく、揉め事になったようだ。
ある日、おばあちゃんは、お局様のような女子に呼ばれ・・・。
そこから先は、僕の想像を遥かに超えるもので、とても言葉では言い表せない。
でも、冬がずっと続けば、おじいちゃんとずっと一緒にいれたのに。
その言葉はなぜか少し印象的だった。
世界の真実は未だ分からない。もしかしたら一人の女性の些細な願いを、神様が叶えてくれたのかもしれない。
僕は、そう思うことにした。
たかが中学生の思いつき程度で、理解できるほど世界の真実は単純じゃないのかもしれない。
どうして冬以外の季節がなくなったのか。
おばあちゃんが何を語ったのか。
それは、たまの機会に委員長に話そうと思う。